社会福祉国家試験対策人体の構造と機能及び疾病 小脳 大脳辺縁系
- By: Kuririn
- カテゴリー: 人体の構造と機能及び疾病, 社会福祉士国家試験対策
人体の構造と機能及び疾病
神経系について
人間の脳は,中枢神経と末梢神経に大別され,それぞれの分類は以下のようになる。
まず,中枢神経には脳と脊髄とが挙げられ,脳は大脳,小脳,間脳,脳幹に大きく分類できる。
脳にはいろいろな機能があることは,おそらく皆さんご存知だろうが,ここでは小脳と大脳辺縁系について,簡単に解説しておく。
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小脳
小脳は,大脳の後ろ下部にある。前面には脳幹があり,小脳と脳幹は頭蓋骨や厚い膜でがっしり囲まれている。そのため,もし小脳に出血や腫瘍などが発生すると 脳幹 へのダメージなど,致命的な病態を引き起こしやすい。
小脳の働き
小脳は,知覚と運動機能の統合,平衡・筋緊張・随意筋運動の調節が主な機能である。
例えば歩くとき,どの筋肉をどの順番で動かせばいいか,ということをいちいち頭で考えなくても歩くことはできる。
しかし実際には,太もも,ふくらはぎ,ひざや足首など,適切に動かし,なおかつ体幹でバランスなども制御しないと,歩くという行為は難しい。歩きはじめの赤ちゃんなどを観察すると,歩くということがどれほど複雑な行動を組み合わせて成り立っているか,理解できる人も多いだろう。このような各筋肉・骨格等を共同させる,共同運動が小脳の重要な役割である。
このように,意識に上らないような行動の指示や統合を小脳は行っている。
また,実際の運動と目標の運動の差を補正する役割も小脳が担っている。例えば,階段を上ったりするときに,視覚で階段の位置を把握し,歩幅が合わなければ調整を行ったりする。これらも小脳の働きで行われている。
また,筋肉の緊張を維持し,姿勢の保持を行うなど,私たちがほとんど無意識に行っている。
大脳辺縁系
大脳辺縁系は,脳の内部にあり,脳梁を取り囲むように位置する。
重要な部位としては,海馬,偏桃体,嗅神経などが存在する。
大脳辺系の働き
本能行動
食欲,排せつ,性行動,探索,帰巣,好奇心など,本能的な行動の中枢となっている。
動物の偏桃体を刺激すると,舌なめずりやモノを食べる動作が現れ,破壊すると異常な食欲を示し,食べられないモノも口にしてしまう現象がみられる。
また,偏桃体と隣接する辺縁葉を破壊すると,だれかれ構わず性行動を示そうとする(オスのみ)
また,海馬や偏桃体を破壊すると,好奇心や探索行動を示さなくなり,無関心になる。
情動反応
偏桃体を破壊すると,恐ろしいものを見ても,まったく恐怖心を持たなくなる。また,攻撃性を失い,大人しくなる。
一方で,視床下部のある部分を破壊すると攻撃的な凶暴な性格になる。
このことから,大脳辺縁系とそれに関連のある視床下部は,情動反応に関係していると考えられている。
記憶
長期記憶障害のうち,記憶障害と作話(忘れた部分のつじつまを合わせるために勝手な作り話をする)を有するものをコルサコフ症候群という。これは,大脳辺系の一部や視床の一部を損傷された時にみられ,慢性アルコール中毒の患者等によくみられる。
また,海馬は記憶に大きく関わることでもよく知られている。
*クリューバー・ビューシー症候群(Klüver–Bucy syndrome)
クリューバーとビューシー が報告したことにちなむ。
両側大脳辺縁系,特に偏桃体やその近くの破壊によって,サルには以下のような症状が生じた。
視覚失認(精神盲):目に見えるものが何であるかが認識できなくなり,すべて口に入れてエサであるかどうか認識しようとする。
性行動の変化:だれかれ構わず性行動を示そうとする性行動異常
情動の変化: 恐ろしいものを見ても,まったく恐怖心を持たなくなる。 攻撃性の低下。
人間でも,脳炎などで両側頭葉が冒された時に,同様の症状がみられる場合がある。