心理社会的発達理論
- By: Kuririn
- カテゴリー: 社会福祉士国家試験対策
人体の構造と機能及び疾病
さて,エリクソン(エリク・H・エリクソン)と言えば,「心理社会的発達理論」,「アイデンティティ」,「モラトリアム」。
社会福祉士の国家試験では,特に心理社会的発達理論について問われることが多いので,それについて簡単に触れる。
スポンサーリンク心理社会的発達理論
まず,「発達」と聴いて,どのような意味だと考えるだろうか。
一般には,「発達」という言葉は,誕生~成人期の各機能が成熟する過程を指して使われる。
エリクソンは,「発達」を生涯にわたるプロセスと考え,ライフサイクル(人生周期)に焦点をあてた。
現在の心理学における「発達(development)」とは,受精から死に至るまで,一生涯の「質的・量的な変化の過程」を指す。つまり,「年を取って優しくなった」というのも,一つの発達なのである。
この分野の心理学的な研究を特に発達心理学という。
エリクソンは,1950年ごろ,人間の一生を以下の8つの発達段階にわけ,各発達段階に習得しておくべき発達課題があるとした。(各発達段階に対応する年齢は,諸説ある。)
エリクソンは,もしその発達課題を克服できない時,心理的な危機が生じるとした。(表は, 「発達課題 vs 心理的危機」の形で示されている。)それぞれの発達課題は,次の発達段階における発達課題の習得の基盤となるものである。
ただし,エリクソンは,成功のみを良いものとしているわけではなく,失敗することもそれなりに経験する必要性があるとしている。 また,ある発達段階を過ぎたとしても,その段階の発達課題を改めて獲得することも可能としている。
乳児期(0~2歳頃)
発達課題:基本的信頼 vs 不信
乳児は,母親から安定した養育を受けることにより,基本的信頼が獲得される。
幼児期(2~4歳頃)
発達課題:自律性 vs 恥,疑い
幼児は,排せつをコントロールすることにより,自律性の感覚を身につける。
就学前期(4~5歳頃)
発達課題:自主性 vs 罪悪感
この時期は,世界にどんどん侵入していき,自分を主張していく積極性と,そういうことをすると自分は罰せられるのではないかという罪悪感が発達課題となる。
学童期(5~12歳頃)
発達課題:勤勉性 vs 劣等感
この時期は,学校で学習する。勤勉さが成功すると,物事を完成させる喜び,周囲の承認,有能感や自尊心が得られる。
青年期(13~19歳頃)
発達課題:自我同一性 vs 同一性拡散
自分がどんな人間かということを確立すること(自我同一性の確立)が課題となり,これに失敗すると役割混乱が起こり,同一性拡散が生ずる。
*自我同一性は,英語を用いて,アイデンティティ(identity)とも呼ばれる。
成人初期(20~39歳頃)
発達課題:親密さ vs 孤立
自我同一性を確立した者は,他者と親密な相互関係を持つことができる。これは,結婚とも関連する。
成人期(40~64歳頃)
発達課題:生殖性 vs 停滞
この時期は,次の世代を育てることに関心を持つ。自分の子どもだけではなく,仕事の後輩など周りの人間,社会などを育てることもこの時期の課題。
*生殖という言葉が使われているが,エリクソンは生産も含むとしている。英語の「Generativity」,「世代性」という語もよく使われる。
成熟期(65歳頃~)
発達課題:統合性 vs 絶望
今までの自分の人生を総合的に評価し直し,自分の人生を受け入れ,肯定的に統合することが,この時期の課題。
補足
老年的超越
近年,Tornstamが提唱した老年的超越が,エリクソンの第9段階の発達課題の可能性であることが指摘されている。
一般に高齢化して身体機能が低下すると心理的な側面の悪化ももたらす。しかし,ある一定の年齢を越えた高齢者は身体機能の低下が心理的側面に及ぼす影響が小さくなる。
Tornstamは「物質的で合理的な世界観から,宇宙的,超越的,非合理的な世界観への変化」を老年的超越としており,この現象が上記のような心理的変化を及ぼすことが推察されている。(増井(2016).日老医誌,53,210-214.)
スポンサーリンク