近年,大学では「社会人基礎力」であったり,「人間力」の育成に力を入れているところも少なくない。
当然,就職率を上げるための取り組みだが,大学でそれをやることにどれほど意味があるのだろうか。
今回は,特に「社会人基礎力」について考えてみたい。
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社会人基礎力とは
社会人基礎力とは,「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年から提唱しているものだ。(http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
一応,「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。
2000年代になって,ニートなどの若年無業者が社会問題になり,大学や高校から産業界への移動の壁が論じられるようになった。
そこで経産省は,企業などに,新入社員に身につけておいてほしい力についてアンケートを取り,この「社会人基礎力」を2006年に定義したわけだ。
(http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/pr1.ppt)
そんなわけで,ほとんど専門学校化した地方私立大学や三流私立なんかは,「就職率」を高くしたいもんだから,この社会人基礎力を上げることに躍起になって,いろんなことをやっている。
ずいぶん前から,アクティブラーニング(AL)やプロブレム・ベースド・ラーニング(PBL)が大学教育で流行っているのは,この「社会人基礎力」を上げようと,試行錯誤しているからだ。
中には,1年生の頃からこういう取組をおこなっている大学もあり,大学で学ぶ準備(レポートを書く力,プレゼンをする力)もほとんどできていないのに,初年次教育に,この大学で学ぶ準備+社会人基礎力向上に向けたPBLなんかを組み合わせてやったりして,結局何の効果も上げていない三流大学も多い。
大学で社会人基礎力を高める意味とは
では,大学では,どのようにこの社会人基礎力を高めようとしているのかと言えば,さっき言ったALやPBLなどである。
では,これでどれほど社会人基礎力は高くなるのだろうか。
これについて,検証している大学もあれば,検証していない大学もあるだろう。
そして,就職率も上がれば,
「あ,社会人基礎力を高める取り組みをしたから,就職率も上がったんだね。」
とそういう話になり,いろいろと宣伝もしやすくなる。
ま,このALやPBLで社会人基礎力が高まると仮定しよう。
「ああ,それは良かった。」で終わる話ではない。
この社会人基礎力を高めるために,大学も学生もかなりの労力を払っているわけである。
(特に学生なんかは,なんかよくわからんけど必修だから,仕方なしに授業を受けている人も多い)
で,このプログラムの費用対効果をしっかり測らなければならないわけだが,おそらくほとんどの大学でそれはできない。
だって,ちゃんと測ろうと思ったら,そのプログラムをやっていない群とやった群を比較しなきゃいけないからね。
大学で社会人基礎力の教育はするべきではない
筆者は,この社会人基礎力は,大学の授業で行うのは,とても非効率的だと考える。
必修で,仕方なく出席している大学生がほとんどだろう。
PBLにしてもALにしても,「必修」という形態だとやりにくくて仕方ないし,一部の学生にとっては苦痛でしかない。
そもそも社会人基礎力は,大学で高めるのではなくて,社会で高められるのではないか?
筆者は,これらの能力は,大学の教育で行うよりも,アルバイトなどをした方がはるかに効率的に高められると考える。
だって,それは社会人の基礎能力なんだから。それを高めるためには,社会の中で高めるのが効率的でしょ?
そもそも筆者は,大学は社会人の養成施設となり下がるのは,大反対なので,社会人基礎力を上げるために大学に行くのなら,大学なんか行かずに就職する方が,より早く社会人基礎力も高められると考える。
「大学に行って,社会人基礎力を高めて,行きたい就職先に行く」よりも,
「みんなが大学に行っている間に働いて,その人たち以上に社会人基礎力を磨いて,行きたい就職先に転職する」方が,時間も費用も効率的に使える。
そもそも大学は,社会の役に立つことを意図して,いろいろ教える機関ではない。
大学はそれぞれの専門性に特化したことを教え,それを生かすも殺すも学生しだいなんだ。
だから,企業が大学生に求めるからと言って,大学側がそれに合わせていろいろ教育方針を変えること自体がおかしいことだ。
まとめ
ま,社会人基礎力を高めたかったら,大学でやるよりも,アルバイトをした方が,はるかに効率的だと思う。
そして,大学側も,そんな頑張らんでいいと思うよ,ほんと。
学生にとっても大学側にとっても,無駄が多すぎるわ。