大学なんていく必要あるのか?

大学教育

日本の義務教育は,中学校3年までで,それ以降の教育については,それぞれの個人の自由に任せてある。
しかし,ほとんどの人は高校へ進学し,その後大学等へ進学するのが,いまの時代「当たり前」となっている。

高校と大学,合わせて7年間の時間とそれなりの学費を投資してまで,勉強したいと思うのはなぜだろうか。
そもそも大学に進学することで,どんなメリットがあるのだろうか。
今回は,この辺りについて考えてみたい。

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高校・大学への進学率

内閣府の統計によれば(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h26/gaiyou/html/honpen/b1_s05.html),
高校への進学率は男女ともに95%を超えており,
大学への進学率は男性が54%,女性が45%程度となっている。

上記リンクより抜粋

つまり,子どもの約半分は大学まで進学しており,ここに記載されていないが,他にも短期大学や専門学校に進学する者もあわせると,
7割前後は高校を卒業し,その後何らかの学校に通っているということがわかる。

高卒と大卒とでは,生涯賃金が違う?

これに関しては,ネット上には様々な情報が流れている。

生涯賃金に関して言えば,現在の統計では大卒の方が有利なようだ。

2016年,文科省の発表によれば,男性社員の生涯賃金は,大卒の方が高卒よりも約7000万円高いということを主張している。もちろん,高卒は大卒と比べると,4年間余分に働いているわけで,それを考慮してこの数字となる。

大学にかかる学費はというと,ざっと年間100万円(私立の場合。もちろん,文系と理系とで異なる。)
4年間だと、400万円になるわけだから,それを考慮しても,「大卒の方がお得!」ということになる。

これが,どういうデータに基づいているのか定かではない部分もあるが,おそらくこれは今後の生涯賃金を予測したものではなく,現在の18歳~65歳のデータを集計したものだと推測される。

何が言いたいのかというと,大学進学率50%前後の時代のデータから,大学進学率20%前後の時代のデータが混在して,このような結果になっているということだ。
つまり,現在の集計結果が,このようになっていたとしても,これから高卒と大卒にそれだけの差が表れるのか,甚だ疑問である。

ネット上には,「大卒の方がお得!」,「高卒の方がお得!」とどちらの意見も散在しているだろう。
どちらの意見が正しいのか。実は,これは誰にもわからない,というのが正解なのかもしれない。

大学は卒業した方がいいのか?

大学は卒業した方がいいのか?
筆者は,いくつか疑問に思う部分がある。

  • 大卒者が増えた現代,採用側は「大卒」にそんなに価値があると感じているのか?もし,「大学で自分は何も学ばなかった」と感じている採用者ならば,そこにこだわらないかもしれない。
  • 4年間という時間は長い。若いうちから採用して,企業という,目的を持った環境の中で教育した方が,優秀な人材を育成できるではないだろうか。
  • そもそも現代の大学は,入学することに価値があって,卒業することにはそれほど価値が見出されていない。一度,大学に入ってしまえば,中退と卒業に差はあるのか。
  • 学歴を重視する企業は多いのかもしれない。しかし,大学に行くのが当たり前になってしまった現代,その数は減ってきているのではないだろうか。

筆者は,高卒より大卒のほうが有利という論には懐疑的だ。
そして,もし大学に行くのであれば,生涯賃金云々ではなく,純粋に自分の知的欲求を満たすために大学に行ってほしい。
それが,本来の大学のあるべき姿であると思うし,そうであって欲しいと思う。

大学は付加価値をつけるところではなくて学ぶところ

現状,「大卒」と「賃金」は結びつけられて考えられているのだろうと思う。
大学で何も学ばずに4年間過ごし,「大卒」の資格を得る学生も多いのではないか。

大学で学ぶことは,本来すごくマニアックで,世の中で役に立つかどうかわからないようなことばかりだ。
そこで学んだことを仕事に活かしてもいいし,活かさなくてもいい。
学問とは,本来それくらい自由なものなんじゃないだろうか。

大学側も大学側だ。
世の中のニーズに答えるために,「社会に出て役に立つ教育」に力を入れているところがあまりにも多い。
これでは,大学の研究力が下がるのは,仕方がない。
研究とは,世のため人のためにやるものじゃないと,著者は考えている。

大学こそ社会人が活用すべき

もし,大学に行くのであれば,大学での勉強の実際でも書いたけれど,一度社会人を経験した人に行ってもらいたい。
大学は,自分で問を立てることができないのであれば,何も学ぶことは出来ないと筆者は考えている。
そのような環境の中で,最大限学ぶことができるのは,これまで社会でいろいろな経験をして,多くの問いを自分の中に持っている社会人だろう。

私が考える大学の活用の理想は,高卒の社員を抱える企業が,3年以上経験した社員に,一度大学生をやらせてみる,というものだ。
まあ,4年間は長すぎるかもしれないけど,研修の一環として,大学や大学院を利用するのは,社員の成長のためにも非常に有用だと考える。
高卒で大学に入るよりも,社会人を経験して大学に入った人の方が,はるかに多くのことを吸収して帰ってくるだろう。

まとめ

筆者は,これから高校を卒業される方に,「とりあえず大学」ではなく,「とりあえず就職」と考えてもらいたいと思う。
大学では,自分で問を立てることができなければ,4年間の時間と学費がほとんど無駄になる。
それだけの時間と費用を費やして得られる「大卒」の肩書が,今後どれほど役に立つのかもわからない。

であれば,とりあえず就職して,「必要」と感じた時点で大学に行くという方が,賢い選択ではないだろうか。
「大学は,就職していない若者が行くところだ」という既成概念は取っ払って,多くの人が自由に出入りできる場所に大学にはなってもらいたいと筆者は考えている。

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