高齢化になって困る事

高齢化問題

これまで,高齢社会の現状と高齢化の原因についてみてきた。「高齢化社会の現状」では,日本が急激な高齢化を迎えており,現在,日本の高齢化率は世界一位であることを紹介した。さて,それでは,高齢化になってしまうと何が問題なんだろうか。実際,高齢化ということは,高齢者の割合が全人口に対して増えるということだけど,高齢者が増えることによって,具体的にどのような問題が生じるのだろうか。今回は,高齢化によって生じる問題について紹介したいと思う。

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目次

社会保障給付費の増加

厚生労働省の発表が2017年,「なぜ今,改革が必要なの?」とホームページで情報を公開している(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kaikaku_1.html)。これによれば,1950年の社会保障費が0.1兆円であったのに対し,2017年の予算では120.4兆円となっており,この67年の間で,社会保障費は実に1200倍まで増加している。当然,1950年当時と比べて円の価値も変わっているし,政策にも大きな変換がある。

高齢化率が7%を超えた,いわゆる高齢化社会に突入した1970年代には,当然のように高齢者に対する社会保障を充実させる風潮は高まり,1973年には老人医療費無料化などの政策も取られる。この1973年は,福祉予算が増加され,「福祉元年」と呼ばれる年にもなった。

高齢化率は,そのまま増加を続け,1989年には高齢者保健福祉推進十か年戦略,いわゆるゴールドプランが策定され,その後も「高齢社会」に突入した1994年には新ゴールドプラン,1999年のゴールドプラン21,2000年には介護保険法が施行される。

こういった政策もあり,社会保障費は,どんどん増大していく結果となる。社会保障費には,大きく「医療費」,「年金」,「介護保険」等が挙げられると思うが,それが増大するとどのような問題が生じるのだろうか。

医療費の増大

まず医療費について考えてみる。この医療費は,医療保険の保険料と自己負担額(通常3割)で賄われていると思っている人が多いのではないだろうか?

厚生労働省が発表した資料を紹介しよう(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html)。この発表を見るとわかるように,実は医療保険の38.8%は,公費,つまり税金で賄われていることがわかる。また,「医療費の患者負担について」という部分を見てみると,70歳以降は2割負担,75歳以上は1割負担となっている。

では,高齢化とこの医療費は,どのように関係してくるのだろうか。実は,65歳以上の医療費は医療費全体の実に半分以上の割合を占める(https://news.milize.com/2014/10/10162/)。

常識的に考えて,高齢者ほど怪我や病気をしやすく,病院に通う頻度が多くなる,というのはわかるかと思う。通院の回数が増えるため,高齢者一人当たりの医療費が増えてしまう。そのため,高齢者については医療費の自己負担額は低減されるように,いくつかの政策がとられている。その典型は前述した1973年の老人医療費無料化である。当時,老人医療費が無料化したことにより,病院が高齢者のサロン化してしまい,病院の待合室で「今日,○○さんが来てないわねえ。調子でも悪いのかしら。」という会話が挙がったというブラックジョークもあるくらいである。

高齢化率が上昇すれば,当然高齢者にかかる医療費も多くなり,その分税金も多く使わなければいけない。これが高齢化が社会問題ととらえられる原因の一つである。

年金の増大

高齢になれば,年金を受給できるというのは,多くの人が知っていることだろう。2018年現在,65歳以上から年金は受給することができる。

ではこの年金の支出元はどこからなのだろうか?当然,20歳以上の人であれば年金を収めているので,そこから出ているというのはわかるだろう。しかし,それだけではない。国民年金の収入と支出についてわかりやすくまとめたサイトがある(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO13628890T00C17A3PPD001)。この「年金の収入と支出の仕組み」の図を見てもらえればわかれば,保険料の他に「国庫負担(税金)と書かれている。ここに書かれている通り,年金の2分の1は,国庫負担によって賄われている。

つまり,年金受給者が増えれば増えるほど,国庫負担の割合,つまり税金からの支出が増えてしまうわけだ。これも高齢化が社会問題とされる原因の一つであろう。

介護保険料の増加

高齢で,要介護状態になれば,介護保険を用いて介護サービスを受けることになる。

介護サービスの利用者負担は原則1割負担。残りの9割はいわゆる「介護保険料」から出ると思っている人も多いだろう。しかし,実際にはどうなのだろう。

こちらの記事(http://www.medwatch.jp/?p=10853)では,介護保険の支出割合を示してある。介護保険料は40歳から支払うが,40歳から64歳までを第二号被保険者,65歳以上の方を第一号被保険者と呼ぶ。この第一号被保険者,第二号被保険者が支払う保険料が自己負担を除く部分の50%を占める。残りの50%は,市町村が12.5%,都道府県が12.5%,国が25%を賄う。

つまり,高齢化が進めば,国,都道府県,市町村は多くの資金を使わなければいけないということになっている。介護保険も医療保険や年金と同様,すべてが納められる保険料によって賄われるものではなく,税金が半分使われている。

まとめ

ここまで見てきたように,高齢化が進めば,医療を受ける人が増えるために,税金を使わなければならない。また,年金受給者が増えるために,そこにも税金を使わなければいけない。そして,要介護状態になる高齢者が増えれば,そこにも税金を使わなければならい。高齢化が社会問題として扱われる原因には他にもあるが,社会保障の面を見るだけでも,高齢化が大きな社会問題として扱われることはよくわかるだろう。高齢者が増えれば,その分税金を使わなければならない,ということだ。

それでは,この高齢化に対して,どのような対策が求められるのだろうか。
また,このように増えている高齢者を有効に使うことは出来ないのだろうか。これについては,「資源としての高齢者」にまとめた。

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