現在,日本では高齢化が進行している。(高齢化社会の現状)
その結果として,医療費や介護に必要な費用,年金等が増大するなどの問題を挙げた。(高齢化になって困ること)
それでは,現在どのような対策が取られているのだろうか。
ここではそれについてまとめてみたい。
目次
健康寿命の延伸
「資源としての高齢者」にも書いた通り,高齢者であっても,健康でさえあれば,医療費や介護保険料の支出を抑制することができる。
そこで,日本では,国民が健康を保つことを義務としている。
21世紀における国民健康づくり運動(通称「健康日本21」)では,健康寿命の延伸などを実現するために厚労省によってはじめられた国民の健康づくり運動について,様々な指針を与えている。
健康日本21では,以下の5つの基本的な方向に対応して,53項目にわたる具体的な目標値が設定され,この目標値に向けて様々な活動が行われている。
- 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
- 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
- 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
- 健康を支え,守るための社会環境の整備
- 栄養・食生活,身体活動・運動,休養,飲酒,喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善
そこで,この健康日本21を具体化するために,平成14年(2002年)に,「健康増進法」が制定された。
その第2条に,「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」とあり,
健康を保持することは,国民の義務として定められている。
健康を保持することを国民の義務として明文化している国は,世界でもまれであり,
国際的にみても高齢化が最も進行している日本を象徴しているといえるだろう。
健康増進法の具体的な内容
健康増進法では,以下の6つの事業が市町村により実施されることを定めている。
- 歯周疾患検診
- 骨粗鬆検診
- 肝炎ウイルス検診
- 健康診査
- 保健指導
- がん検診
また,受動喫煙を防止するため,学校,体育館,病院など多数の者が利用する施設を管理する者は,必要な措置を講ずるよう努めることが規定されており,
近年では原則屋内禁煙(ただし除外範囲もあり)が順次施行されつつある。
定年の引上げ・廃止
これも「資源としての高齢者」に書いた内容と重複する部分もあるが,年金の需要の拡大に対して,定年の引上げという対策がとられている。
厚生労働省は,中小企業に定年引上げ奨励金を実施している。
65歳以上への定年の引上げ,または定年の廃止を実施した中小企業事業主に対して,奨励金を払うという制度だ。
もし,定年が引き上げられたり廃止になった場合,働き続ける高齢者も増えるだろう。
そうすれば,「資源としての高齢者」で述べたように,十分な賃金が得られる高齢者に対して,年金を支給しなくてもすむ。
年金を受け取らなくて済む高齢者が,退職等で年金を受け取るようになったとき,
年金を受け取らなかった期間に応じて,月々に受け取れる年金額が増えるような制度作りも進められており,
これによって,年金の需要を抑制することが期待できる。
また,高齢者が働くことは,高齢者の健康維持にもつながると考えられる。(資源としての高齢者)
そうすれば,先に述べたように,医療費や介護にかかる費用の抑制にもつながることが期待できる。
介護予防
2014年(平成26年)に,「医療介護総合確保推進法」により,全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)が地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業(通称:総合事業)に再編された。
これは,市町村が中心となり,地域の実情に応じて,住民,NPO,民間企業,ボランティアなどが参画し,多様なサービスを充実させることで地域の支え合い体制づくりを推進すること。
また,要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援を可能とすることを目的としている。
これにより,各市町村は地域包括支援センターなどを中心として,地域の介護予防に積極的に取り組むよう,個々に事業を展開している。
まとめ
「高齢化になって困ること」にも述べた通り,医療,介護,年金等には,一部税金も使われている。
これらの費用を抑制するために,国としても様々な事業を展開している。
国としては,これらの事業を国だけではなく,企業等にも協力してやってもらいたく,法律なども含めて様々な働きかけを行っている。
これらの政策は,重点的に行われており,かなり頻繁に改正なども行われており,
国としても大きな危機感を感じていることが伺える。