「末は博士か,大臣か」
将来を期待される人間が,このように言われていたのは,過去の事。
大臣はともかく,博士になってしまったら,本当にもう末である。
大学教員への道,アカポスに就くために院生時代にできることでも書いたように,博士なんかにならず,さっさと就職してしまった方がよっぽど賢い。
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大学教員の収入は?
大学教員はお金持ち,なんて一般には思われているかもしれないけど,実際のところはどうなんだろう。
「大学教授の仕事」には,大学教授は平均年収1000万,大学准教授は平均年収800万,大学講師は平均年収680万と書いてある。
大学教員は一般的に,教授,准教授,講師,助教と役職がわかれるが,このサイトには助教については書かれていない。
別サイトになるが,https://heikinnenshu.jp/komuin/jokyo.htmlでは,国立大助教は400万~450万,私立大で500万~600万となっている。
大学院を修了して,はじめて大学教員のポストに就くのは,多くの場合,助教だろう。つまり大学院を出て,上手く就職できた場合,それくらいのお金がもらえるということになる。
ここで気を付けておきたいのは,多くの場合,最初は3年契約~5年契約の任期制であるということだ。
大学の教員や研究者の求人サイトであるJREC-INをみると,多くの求人が任期制であることがわかる。
つまり,若手の研究者というのは,しばらくは任期制で仕事をしており,場合によってはそのまま任期無(つまり終身雇用)の契約に切り替わるが,次の仕事を探しながら仕事をしているというのが実態である。
大学教員の支出は?
先に紹介した年収を見て,大学教員の年収が高いと思うか安いと思うかは,人それぞれだと思う。
ただし,大学教員,特に若手はそれなりの支出がある。
大学教員は,教育者ではあり,研究者でもある。
最新の研究を行い,学生に最新の知見を教えるのが大学教員の仕事だからだ(本来なら,ね。)
そのため,多くの教員は博士の学位を持っている,あるいはそれと同等の研究実績が求められる。
それでは,博士課程に行っている間,彼らはどのようやって家計をやりくりしていたのだろうか。
多くの場合は,奨学金を使っている。
裕福な家庭で育った人なら,大学院まで実家からの仕送りがあるかもしれないが,多くの家庭は,できたとしても学部4年間の支援でいっぱいいっぱいである。(というか,学部4年間ですら支援できない家庭もたくさんあるだろう。)奨学金制度とアルバイトを併用しながら,なんとか生活をやりくりして大学院生活を過ごしてきた人が多いだろう。
そのため,大学院修了後,10年~20年は,奨学金の返済が求められるわけだ。
さらに,研究にかかる費用もバカにならない。
学会に参加するための移動費,各学会に支払う年会費,研究に関わる費用等,何かと出費はある。
当然,大学や国から研究費をもらうこともできるが,大学によっては研究費の助成がほとんどない大学もある。
研究費は,申請してパスをすればもらえるが,採択率は3割程度であろうか。
もし,不幸にも研究費が十分にもらえなければ,その人は自腹を切って,研究費を支払わなければならなくなってしまう。
大学教員の生計詳細
私の知り合いは,地方の私立大学に助教として勤めている。
彼の話によれば,年俸450万円で,任期は3年。手取りは30万だという(年俸制なのでボーナスはなし)。
この月額30万の中から,奨学金がまず支払われる。彼の場合,苦学生だったこともあり,学部から奨学金をもらっており,月額8万5000円支払わなければならない。さらに,地方ということで,車も購入しなければならず,(当然彼にはキャッシュで払う財力はなかったため)車のローン代1万5000円支払っている。
つまりざっと計算して,月20万円で生活していることになる。
さらにそこから研究費を捻出するとなると,貯蓄はほとんどできないのが現状だろう。
今年は,海外の学会に行くのはあきらめたということである。
そんな彼は30歳で博士の学位を取得し,現在35歳の独身。結婚願望はあるらしいが,正直共働きじゃないと結婚は厳しい。
また,任期制ということもあり,就職先を常に探している状況で,同じ地域にずっと住んでいられるとも限らない。
上手く任期無しのポストに就けることを願っているが,研究業績が充実しないと,なかなかそういうポストを狙うのも難しいので,いまの状況だと厳しいのではないかと,筆者は正直考えている。
まとめ
正直,大学の教員は教務と学務だけで,めちゃくちゃ忙しい仕事だ。そこにさらに研究業績を積まないと,任期制の場合,次の仕事も危うい状況となってしまう。
また,博士の学位を得て世に出るのは30歳前後。
それまでに奨学金などをもらっている場合も少なくなく,少なくとも若手と言われる年齢(30歳~40歳くらい)までは,生活に余裕はあまりないのが現状だろう。
当然,先に挙げた事例は一例に過ぎないので,他の状況もたくさんあるかもしれないが,少なくとも地方私立はこんなもんなんじゃないかと筆者は考えている。
国立大学やそれなりの私立大学なら,また状況も違うかもしれないが,いずれにせよ若手の大学教員は生活に余裕はないのが実情だろう。(それでも,博士課程を修了した人全体からしてみたら,大学教員のポストに就けた,というだけでも御の字なんだけどね。)