高齢化と共に,いま日本で社会問題になっているのが少子化の問題である。
高齢化が進めば,労働人口が減少する。
まあ,高齢者になっても働いてもらう,という考え方もあるにはあるんだけど,一般的には労働人口が減少すると考えていいだろう。
で,さらに少子化!ってなると,労働人口がさらに拍車をかけて減少するのは目に見えているだろう。
スポンサーリンク目次
合計特殊出生率
少子化の一つの指標として,出生率(しゅっしょうりつ)という指標がある。つまり,どれくらい子どもが生まれているかを表す指標だ。
単純な出生率は,その年の出生数を総人口で割った値で計算される。
例えば100人の人口で,2人子供が生まれた場合,
2÷102=0.019となる。
つまり,「1.9%は新しく生まれた子どもだよ」という意味になる。
ただ,これだと直感的に増えているのか減っているのか少しわかりにくい。
そこで,合計特殊出生率が一般的に使われる。
この計算は,少し複雑だ。
数式で表すと
で表される。
ここで,f(x)は「調査対象において,年齢xの女性が一年間に産んだ子どもの数」,g(x)は「調査対象における年齢xの女性の数」となる。
わかりやすく説明しよう(と頑張ってみる。)
一般的に,女性は15歳~49歳までが出産が可能な年齢と仮定している。
それでは,15歳から49歳までの50人の女性が一人ずついるとしよう。
もし,20歳の女性,25歳の女性,30歳の女性が一人ずつ子どもをその年に産んだとすれば,合計特殊出生率は,
「0+0+0+・・+1(20歳)+0+・・+1(25歳)+0+・・・+1(30歳)+0+・・・」となり,合計特殊出生率は「3」となる。
つまり,合計特殊出生率は0から50の値を取ることになる。
もし,20歳の女性が二人であり,一人だけ子どもを産んだのなら,足される数は1ではなく,0.5となる。
このように,女性を各年齢で分けて,それぞれの年齢の女性がその年に産んだ子どもの数の割合を足し合わせたものが,合計特殊出生率だ。
合計特殊出生率は,当然違う女性たちの出生の割合を足し合わせたものだけど,一応これを「一人の女性が産む子どもの平均的な数を表す」と解釈する。
もちろん,世代による違いはあるだろう(今の20代と40代との女性では,文化的な差や経済的な差も大きいだろう。)。
けど,「現在は,15歳だと平均何人産んだ,16歳だと平均何人産んだ,・・・49歳だと平均何人産んだ」という数を足し合わせることで,女性が一生に産む子どもの数をとりあえず概算した,ということになる。
もし,一人の男性と一人の女性とが一生添い遂げるのだとしたら,その夫婦が2人子どもをもうければ,人口は維持されることになる。
けれども,出産可能年齢以下で亡くなる女性がいることなどから,人口が維持される合計特殊出生率の境目は2よりほんの少し大きい,2.07とされている。
少子化少子化って言われるけど,どのくらい少子化なの?
さて,合計特殊出生率が2.07で人口が維持される,もしそれ以下なら,人口は徐々に減っていくんだけど,日本の状況はどうなのか。
統計データのある中で最も合計特殊出生率が高いのが,1949年で4.32だった。
平均的に,子どもが4人から5人いることになる。
この頃が第一次ベビーブームと言われる。
そこから,1950~60年代は,2前後で合計特殊出生率は推移するけど,1966年一時的に1.58まで下がる。
この年は丙午(ひのえうま)と言われる年で,丙午年生まれの女性は気性が激しく夫の命を縮めるという迷信があったためだ。
そこからまた2前後に回復し,1973年は合計特殊出生率が2.14となる。この前後を第二次ベビーブームという。
そこから,合計特殊出生率は下がり始め,1989年は1.57となった。
丙午は,それなりの理由(迷信)があって,1.58だったけど,自然と合計特殊出生率が減少して,それを切ってしまったということで,1989年は「1.57ショック」と言われた。
その後も合計特殊出生率は下がり続け,2005年に最低の1.26となっている。
それから少し回復して,2017年現在,合計特殊出生率は1.43となっている。
先に述べた通り,合計特殊出生率は2.07が人口を維持できるラインであり,日本では実は1974年以降,そのラインを越えてはいない。
医療技術の向上により,日本人の平均寿命が延びたため,人口は2005年まで減少していなかったけど,現在は減少傾向にあり,今後この減少がさらに加速することが予測される。
まとめ
ここでは合計特殊出生率とその推移について説明した。
合計特殊出生率が低下し,さらに母親世代の女性の人口も減少しているので,子どもの数は減少している。
じゃあ,どうしてこんなに子どもの数が減って来たのか,また子どもを産む女性が減って来たのか。
それについて,また書いてみたいと思う。