育児や介護をしていると,「自分は虐待をしてしまうんじゃないか。」と不安になる人もいるかもしれない。
実際,著者も育児をしていて,子どもが泣き止まなかったり,抱っこから解放してくれないときはうんざりしてしまう。
介護についても同じようなことがあるだろう。
そこで,虐待が起こってしまう要因やその対策について,考えてみたいと思う。
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虐待の種類
虐待とは,goo辞書さんによれば,
「むごい扱いをすること。ひどい扱いをすること。」
となっており,調べた限りでは,法的な定義はなさそうである。
虐待という言葉が使われる分野は,
- 児童虐待
- 高齢者虐待
- 障がい者虐待
などが挙げられる。
他にもDV等も虐待の一つとして考えられるだろう。
児童虐待
児童虐待では,
- 心理的虐待
- 身体的虐待
- ネグレクト
- 性的虐待
が,定義されており,通報件数が多いのは,上記の順番通りとなっている。
加害者は,2014年の調査によれば,
- 実母(52.4%)
- 実父(34.5%)
- 実父以外の父(6.3%)
であり,実母からの虐待が最も多い。
心理的虐待とは,大声や脅し,無視なども含まれ,近年では子どもの前でパートナーに暴力をふるうDVが,子どもに対する心理的虐待としてとらえられている。
また,ネグレクトとは保護の怠慢、養育の放棄・拒否などと訳され,保護者が,子どもを家に残して外出する,食事を与えない,衣服を着替えさせない,登校禁止にして家に閉じこめる,無視して子どもの情緒的な欲求に応えない,遺棄するなどを指す。育児知識が不足していてミルクの量が不適切だったり,パチンコに熱中して子どもを自動車内に放置する,などもネグレクトに入る。
高齢者虐待
高齢者虐待では,
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 経済的虐待
- ネグレクト
- 性的虐待
が,定義されており,通報件数が多いのは,こちらも上記の順番通りとなっている。
加害者は,2014年の調査によれば,
- 息子(40.3%)
- 夫(19.6%)
- 娘(17.1%)
であり,息子からの虐待が最も多い。
通報件数が多いのは,証拠の残りやすい身体的虐待だが,潜在的には心理的虐待や経済的虐待も多いと考えられる。
高齢者の経済的虐待とは,本人の許可なく,年金等を勝手に使い込んでしまうなどが挙げられる。
障がい者虐待
障がい者虐待では,
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 経済的虐待
- ネグレクト
- 性的虐待
が,定義されており,通報件数が多いのは,こちらも上記の順番通りとなっている。
加害者は,2014年の調査によれば,大半が家族によるものとされている。
虐待の原因
これらのデータからの推察になるが,各分野の虐待は,加害者が育児・介護を一人で抱えすぎていることが問題なのではないかと考えられる。
よく「ワンオペ育児」,「ワンオペ介護」などという言葉を聴くが,育児も介護も一人では到底できるものではない。
育児にしても介護にしても,相手を一人にすることはできない。
もし,相手と二人で家にいる場合,買い物に行くことすらかなわない状況が多くある。
そして,育児者・介護者の体力の問題もある。
筆者は,3kgの子どもでさえ,2時間・3時間抱っこするのはしんどい。
どんなに能力が高い人だって,
育児にしても介護にしても,一人でできるものではないのだ。
このことをよく理解してほしい。
もし,育児や介護を一人で抱え込んでしまうと,異常なほどのストレスとなって襲い掛かってくる。
産後うつ,という言葉を聴いたことがある人もいるかもしれない。
はじめて子どもを産んだ母親の実に25%が,産後2週間でうつ状態の傾向がある,というデータも存在する。
このデータは,ワンオペの人も,そうじゃない人も含まれる。
ワンオペじゃない人も含まれるとしたら,どれだけ過酷なものかわかるだろう。
24時間,ずっと束縛される,そのストレスは尋常なものではない。
この動画は,「母親」という仕事の過酷さを表現したものだが,実は高齢者や障がい者の介護にもあてはまると考えてよいだろう。
世の中の母親や介護者は,普通に育児や介護をやっているように見えるかもしれないが,その実,これだけ過酷なことをやっているのだ。
決してそれらは,普通のことではない。
このストレスが強すぎると,ついつい子どもや介護をする相手に手を挙げたくなってしまう。
それは仕方がないことだ。
多くの事が制限された生活で,精神的にも肉体的にも追い込まれてしまうと,自分の生活を制限してしまう相手に対して,きついことを言ったり,手を挙げたくなってしまうこともある。
そんな状態では,泣いている子どもに大声を出したり,手をあげてしまうことがあっても全然おかしいことじゃない。
夜中に大声を出してしまう障害者や,理不尽なことを繰り返し言ったり危険な行動をとってしまう高齢者に手を挙げてしまうのは,むしろ普通なことではないだろうか。
虐待の加害者にならないために
重要なのは,育児や介護の協力者を求めることだ。
人に頼ることは決して悪いことではない。
もし,ワンオペで育児や介護をしている人には,むしろ「頼る力」が求められる。
頼る相手は,パートナーでも家族,友人でもいいだろう。
日本の制度にも,育児や介護を支えてくれる制度はたくさんある。
ただ,多くのサービスは,自分から申請しないと,つまり頼らないと,受けることができないようになっている。
「自分一人で頑張って育児をやる。」
「自分の親なんだから,自分がしっかり介護をする。」
それは,あなたのためにも本人のためにもならない。
そのこだわりはあなたのエゴでしかない。
育児や介護をやってきている人は,必ず誰かの援助を受けて成立している。
周囲に助けを求めよう。
ヘルパーに家に入ってもらおう。
あなた一人でできるほど,育児も介護もあまくはない。
どんなに能力が高い人だって,
育児にしても介護にしても,一人でできるものではない。
育児や介護をしている周囲の人は,できるだけその人をサポートしてあげよう。
何度でも言うが,育児も介護もめちゃくちゃ大変だ。
一人でなんて到底できない。
だから,もしその人を大切に思うのであれば,できる限りの援助をしてあげよう。
育児者や介護者には「頼る力」が必要だ,と述べたが,
「素直に頼られる存在」に周囲の人がなれるかどうか,という問題もある。
まとめ
人に頼ることは,まったく恥ずかしい行動ではない。
むしろ,称賛される行動であると思う。
頼ることができない人は,育児も介護もできず,虐待をしてしまうと,著者は考えている。
虐待を防ぐだけじゃなく,健全な育児や介護を成立させるためにも,
周囲が適切にサポートすることが必要であると著者は考えている。