少子化が進行している現在,もしその少子化をなんとかしようとか言うなら,その原因を考え,その原因に対して対策を講じないことにはどうしようもない。
これまで,大学の進学率,若者世代の貯蓄などについて考えてみたけど,まだまだ考えられる原因はたくさんある。
今回は,晩婚化について考えてみる。
目次
初婚年齢の推移
実際,結婚って,みんな何歳くらいにするんだろうか?
厚生労働省が発表している人口動態調査には,その辺の結果も出ている。
平成30年に発表された「我が国の人口動態」は,読んでみると結構おもしろい。
これの31ページに,平均初婚年齢について書いてある。
ここに書いてある文章をピックアップすると「昭和22年では夫26.1歳、妻22.9歳であり、その後、20年代半ばから30年代半ばにかけて上昇した。第2次婚姻ブーム期の昭和47年前後に低下したが、その後再び上昇し続け、平成28年には夫31.1歳、妻29.4歳となった。平成28年は昭和22年に比べ夫は5.0歳、妻は6.5歳上昇しており、夫・妻とも晩婚化が進んでいる。」とのこと。
つまり,男性は26.1歳(昭和22年)⇒31.1歳(平成28年)
女性は22.9歳(昭和22年)⇒29.4歳(平成28年)
に平均初婚年齢が上がっている。
で,この「平均初婚年齢ってなんぞや?」っていう話だが,たぶんSMAMで計算されている。
SMAM=(ΣCx-50・S)/(1-S)
Cxは年齢別未婚率,Sは生涯未婚率
よく,「平均初婚年齢は,婚姻届けを出された年齢の平均値だから,生涯未婚の人は計算に含まれない」という意見を聞くが,SMAMであればそんなことはなく,むしろ未婚の人を基準に計算している。
(計算方法は「和田光平 Excelで学ぶ人口統計学」に詳しい)
2015年現在,50歳での未婚率は,全国平均で男性は23.37%,女性は14.06%となっている。
この値は年々増加傾向にあり,1920年時点では,男性2.17%,女性は1.8%なので,急激な増加が見て取れる。
(国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料2018)
希望結婚年齢
では,結婚を希望する人は減少しているのかというとそうではない。
18歳から34歳を対象にした調査では,2015年時点で,
男性は85.7%が将来「結婚するつもり」と回答しており,女性は89.3%が同じように回答している。
(国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査)
また,希望する結婚年齢については,18歳から34歳を対象にした調査では,希望する結婚年齢の平均値は,
2015年時点で,男性は30.4歳,女性は28.6歳である。
(国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査)
先に挙げたように,平均初婚年齢は,男性は31.1歳(平成28年)女性は29.4歳(平成28年)なので,この希望する年齢とは1歳前後の差があるということになる。
このように,将来結婚したいと思う人は少なくない。
そして,希望する結婚年齢と平均初婚年齢には大きな開きはないこともわかる。
晩婚化の要因(経済的理由)
結婚を希望する年齢と平均初婚年齢とで大きな差はないことから,男女ともに意図して,30歳前後で結婚しているようにも思われる。
では,その要因は何だろうか。
その一つに経済的な要因が考えられる。
少子化と貯蓄にも書いたように,大学を卒業して,しばらくの間は収入は少ない。
男性,女性共に,「いまのままでは結婚は難しいのでは?」と考えているものと思われる。
また,「結婚するなら,ある程度収入が増えて,生活が安定する30歳前後」と考えているのではないだろうか。
この「30歳」というのは,収入と将来の家族計画を考えた妥協点のようにも感じられる。
30歳であれば,年齢的に子どもをもうけることも難しくないだろうし,収入もそれなりに安定するのではないか,という考え方だ。
もしかしたら,「20代は遊んだり,仕事に熱中したい」と考えている若者も多いのかもしれない。
言い換えれば,収入も年功序列の現代,30歳になってやっと一人前で,その時点でようやく結婚・出産を考えることができる,という考え方が一般化している可能性もある。
こう考えると,若者世代は現実をよくとらえており,結婚についてもそれに基づいてしているようにも感じられる。
晩婚化の要因(大学進学の一般化)
男性女性共に,大学への進学率は50%前後となっている。(大学なんていく必要あるのか?)
つまり,22歳以降に就職する割合が,それくらいだ,ということだ。
となると,すくなくとも社会人として,4~5年くらいで結婚,と多くの若者が考えている,ということになる。
当然,経済的な不安もある。
実際,夫婦共働きの世帯は増加傾向にあり,若者世代は共働きではないと生活をするのは厳しい,という感覚があるのかもしれない。
そこで,男女ともに社会人になり,5年くらいたった30歳前後に結婚したいと考えているのかもしれない。
まとめ
当然,他にも晩婚化の要因はいろいろ考えられる。
ただ,出会いがないから云々の理由は,重要な理由とは考えにくい。
実際,若者世代の結婚希望年齢と平均初婚年齢は近いことから,多くの若者は希望通りの年齢で結婚していることがうかがえる。
しかし,晩婚化が進むと,当然のことながら,合計特殊出生率は低下する。
となると,日本の少子化問題を解消しようとするならば,少子化と大学進学や少子化と貯蓄で指摘したように,
大学進学についてもっと深く検討したり,若者世代の収入について検討するなどの対策が必要になるかもしれない。