少子化の現状でも書いたように,日本の少子化は進行しているといってよい。
前回は,その原因として大学への進学率が高くなったからなのではないか,という仮説を検証した。
今度は,貯蓄が少子化に与える影響について考えてみたい。
目次
少子化とお金の関係
さて,若者世代が「結婚したい!」,「子どもをつくりたい!」と考える時に,まずハードルと考えられるのはなんだろうか。
そりゃ,一番は相手がいるかどうかである。
そして,相手がいたとして。
その次の壁が「お金」ということになる。
もしお金がなかったら,結婚も子どもも,少し躊躇するだろう。
結婚するには,お金が必要。
子育てなんて,もっとお金が必要。
それは間違っていないし,結婚や出産に何かしらの責任を感じている人の発想だろう。
健全な大人であれば,お金がないことには,結婚や出産も「もうちょっと先かなあ」と考えるのではないだろうか。
若者世代の給与
厚生労働省の平成29年の調査によれば,学歴別にみた初任給は,
大学院修士課程修了 23万3千円
大学卒 20万6千円
高専・短大卒 17万9千円
高卒 16万2千円
となっている(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/17/01.html)
ってことは,大学院修士を修了しても,ここから社会保険料なんかが引かれるわけだから,初任給は手取り20万もらえるかどうか,ってとこだろう。
そして,この給料から,都心部では給料の3分の1と言われる家賃が引かれ,その他,携帯代や光熱費,都心部だとバカにならない交通費,そして食費等などがかかってくる。
となれば,貯金はどれくらいできるのか,っていうと,ほとんどできないのが現状だろう。
若者世代の貯金額
じゃあ,若者世代はどれくらい貯金があるのか。
内閣府の2015年の発表が調べたら出てきた。
このサイトの図1-2-6には,各世代の貯金額と負債額が掲載されている。
これをもとに,貯金額から負債額を引いた値を算出してみた。
このグラフをみると,それぞれの世代の平均的な資産は,20代,30代はマイナスであり,40代からやっとプラスに転じることがわかる。
となると,もし「お金がないと結婚できない」となると,「現代の平均的な結婚適齢期は50代以上だね!」ということになる。
ま,これは冗談だし,30代で負債が多くなるのは,子育てに関する支出や住宅ローンなんかもある。
結局,結婚や子育てでお金が必要なのは間違いなさそうだ。
お金が必要な世代が実はお金を持っていない
さて,日本の給与形態はよく「年功序列」と言われる。
ま,最近は転職するのも珍しくないから,それも徐々に変わってきているのかもしれないけど。
でも,DODAが示した2017年の平均年収は,年功序列になっている。
つまり,「結婚」や「出産」でお金が必要な世代は,もらえる給料が少ないことが現状としてあるわけだ。
となると,さっき冗談って言ったけどさ,「現代の平均的な結婚適齢期は50代以上だね!」っていうのは,冗談じゃなくなるかもしれない。
まとめ
子育てにお金がかかるのはいいとして,結婚ってお金がかかるんだろうか。
実際,結婚は役所に婚姻届けを出せばいいだけだからお金はかからない。
ただ,結婚式や披露宴を挙げようとするなら,都心では300万円くらいかかると言われている。
(ま,ご祝儀で半分くらいは返ってくるかもだけどね)
「少子化だー!」「大変だ―!」って言っている人は多い。
一般の感覚としては,「ちゃんと就職してから結婚」「○○円,貯金出来たら結婚」なんていうのは,常識なんじゃないかと思う。子育てについても同じ。
じゃあ,少子化対策として「若い人の給料を増やそう!」っていう人,少数派なんじゃないかなあ。
他の方法としては、「子どもを産むメリット」が感じられるような政策も必要。