この世に,こんなにかわいい生物がいるのかと思ってしまうほど,産まれたばかりの息子はかわいい。
まだ視力もなく,どこを見ているのかわからないけれど,泣いたり,くしゃみをしたり,あくびをしたり,しゃっくりをしたり。時々,生理的微笑も見せてくれたときなんか,抱きしめたくなるくらいかわいい。
声を上げてくれた時なんか,もうどうしようもなくかわいい。ミルクを飲んで,げっぷをしてくれてもかわいい。
本当に,何をやっても,なにもやってなくてもかわいくて仕方ない。何もしていないのに,一日中見ていられる。
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この子は,私たちの所に,産まれてきてくれたんだ。
妻と一緒に長い時間,産まれるために頑張って,きっと苦しくて大変だったけど,いまこうして産まれてきてくれた。
それを考えるだけで目頭が熱くなってくる。
先日,離れて暮らす私の母と祖母がやってきた。
妻が息子を連れてきて,私が
「はい,おばあちゃん。」
と,母に息子を抱っこさせると,
「まあ,まあ。よく産まれてきてくれたねえ。」
と言って,泣いてしまった。
息子から見たらひいおばあちゃんにあたる,私の祖母は,抱っこしながら,
「まあ。しっかり顔しとるなあ。」
とこちらも泣きながら喜んでくれた。
この感情を「喜び」と言っていいのかどうかはわからない。
本当に,「産まれてきてくれてありがとう」という感じなのだ。
いま,ここに,生きてくれている。それだけで,涙が出てくるほどありがたい。
うちの子は,いまのところおなかが空いた時くらいしか泣かない。
病院にいる間も助産師さんに,「良く寝る子だねえ。」と言われるくらい,ほとんど寝て過ごしている。
おむつが濡れたり汚れたりしても泣かない。
また,おなかが空いた時も,そんなにギャン泣きするわけじゃなく,ちょっと声を上げて,それでもしばらく反応がないと,ギャン泣きをし始める。
唯一本気でギャン泣きをするのは,沐浴の時だ。これは,こちらがまだ不慣れというのもあるのかもしれない。もう少し,本人が安心してできるようになりたいと思う。
そんなわけで,夜も比較的平和だ。だいたい12時,3時,6時くらいにミルクが欲しいと泣く。それ以外は,本当に平和に過ごしている。
妻と一緒に,息子の顔をじっと見る。ずっとそうしていられる。
息子の顔を見ていると,本当に涙が出そうになる。
息子を見ている妻の顔を見ていても,涙が出そうになる。
妻に申し訳ない気持ちもある。
息子を産むという大変な仕事を押し付けてしまった。
これから,息子を育てるという仕事も彼女にはある。
もちろん,子育てにはできるだけ協力するが,それでもしばらくは24時間体制で,息子についていなければならないし,妻は1か月ほどは車を運転してはいけないと医者に言われている。
となると,買い出し等は私が行って,妻は家でお留守番,という形になってしまう。
私は,妻にも息子にも頭があがらない。
ありがとうの言葉しかない。
この気持ちをずっと忘れずにいよう。
世の中のすべてのひとは,きっとこんな風に愛されている。少なくとも愛されていた期間はある。
ただそこにいるだけで,「ありがとう」と両親は,心から思ったはずだ。
現にあなたは生きている。あなたが泣いた時にはミルクやおっぱいをくれたり,おむつを替えたりしてくれた人がいたはずだ。
それは,結構大変なことだ。また,ひどい痛みを持って,産んでくれた母親もいる。
そして,「産まれてくれてありがとう。」「生きていてくれてありがとう。」と心から思ったはずなんだ。
私は,この気持ちを忘れないために,ここに記録として残したいと思う。
本当に,産まれてきてくれてありがとう。
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