ポスドク研究員について

ポスドク

大学院生にエールを送るため。これは前回の続きである。

この狭い日本の中だけでも,優秀な先生はたくさんいるし,「天才」と呼べるような先生もたくさんいる。そのような人たちは,学振やその他助成機関から,たくさん研究費をもらえることがある。研究費をもらったからには,その大風呂敷を掲げた研究計画で「結果」を出さなければならない。しかし,そのような先生方は,教務やら学会の仕事やら講演会やら著作活動やら何やらで,くそ忙しい人ばかりなのだ。

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ポスドクの募集が行われる背景

そこで,先生方は「そうだ,研究員を雇おう!」と思いつく。自分の手となり足となり,奴隷のように働いてくれる研究員をjrec-inなどで募集するわけだ。大体この手の研究員は,非常勤で,お金が継続するかどうかもわからないから,任期は1年程度,生活最低限のお給料が支払われる。

ポスドクのお仕事

仕事の内容は,雇ってくれている先生の研究の実行部隊だ。研究の申請内容は,「大体こんなことをやります!」ということが多いので,それを実現するための研究の計画・実施・報告書等の作成。その他,プロジェクトに関わる事務仕事やイベントの企画・実行などなど。同じ大学や研究所の別の偉い先生から,仕事を依頼されることもしばしばある。滅茶苦茶優秀で,実績を積みまくっている人でも,対応できないような仕事をするわけだ。上司は,自分の「普通」な感覚で仕事を依頼してくるから,仕事も大変かもしれない。それだけ実績のある先生は,ハイパーアクティブな先生も多く,昼夜構わずメールが飛んでくるし,自分が「おもしろい!」と思いついたことや他の先生からの仕事の話もほいほいのって,突然研究員に投げてくることもある。それに対して,自分の身体やメンタルが壊れないように適当に対応しながら,仕事を進めていく。

著者も某大学の先生の所で1年間,某独立行政法人で2年間,非常勤研究員をさせてもらった。「聞いてよー,僕はいままで大変だったんだよー。」と共感してもらうために,多少大変さを誇張して(???)ここまで書いてきたが,当然メリットはある。

ポスドクのメリット

先に述べたことを転じれば,たくさんの仕事の経験ができる。否が応でも,泣きながら論文を書くこともあるので,ファーストの論文を書く業績も積める。さらに,自分がちょっとだけ手伝った仕事でも,論文や学会発表,著作に名前を入れてもらえることも多いので,業績は劇的に伸びる。また,研究所や大学に所属していれば,科研費の申請も可能である。偉い先生の考え方,研究の姿勢や方法,研究者としての生き方については,学ぶことも当然多い。加えて,めんどくさくはあるが,研究機関の事務の仕組みも学べるし,様々な企画を立ち上げる力も身につくだろう。また,偉い先生を通して,コネもたくさん作れる。なおかつ,とりあえず,採用されている間は,生活ができる。そして,ブラックに対する耐性も・・・。

ここまで述べたメリット・デメリットは,上司になる偉い先生に依存して,かなり違ってくる。応募する際には,できるだけ上司となる先生がどのような人か,詳しく調べて,学会などでも顔見知りになっておいた方が良いだろう。

ポスドクになるには

では,この手の研究員になるにはどうすれば良いのか。

「私,ポスドク研究員になりたいんです!」という人は少ないかもしれなけど,それでもそれなりにメリットはあるので,考えておいてもらいたい。

一番の近道は,コネである。学会などで,複数の偉い先生と仲良くなっておくと,その先生が公募をかけるかもしれないし,他の先生が公募をかけた時も紹介してもらえる可能性がある。どんなに誠実な先生でも,そこは人間だ。知らない人よりも,知っている人の方が,仕事は依頼しやすい。重要なのは,先生方に「こいつはこういう能力があるんだな。」,「こいつはこういう人柄なんだな。」ということを知ってもらうことだ。興味があってもなくても,とりあえず有名そうな先生には話しかけて,いろいろ質問したり,自分の研究について意見を求めたりしよう。

公募で,まったく面識のない先生の所に応募する際も,決め手となるのは業績よりも,人柄と「こいつ使える!」と募集している先生が思えるかどうかである。著者が某大学の研究員になった際は,公募では著者よりも優秀な業績を大量にもっている応募者が何人かいた(おそらく,応募人数は10名程度であったと思われる)。しかし,先生が著者を選んだ理由は,「著者が高齢者と接することに慣れていること」,「著者を知っている他の先生が,応募した先生の周りにいて,推薦してくれたこと」である。さすがに査読付きの論文が1本もなかったら話にはならないが,最低条件をクリアさえしていれば,あとは募集している先生の印象次第だ。非常勤研究員は,常勤ではないので,採用にあたって,大学・研究所の先生方が顔を並べて厳密な審査をするわけではない。つまり,募集している先生の独断で,ほぼ決まる。

人柄も重要だが,同時に募集している先生のプログラムを実践する上で,「こいつ使える!」と思ってもらわなければならない。著者は,「高齢者と接することに慣れている」という事実から,「こいつ使える!」と思ってもらえた。これは,募集の目的によって大きく異なる。

「プログラミングができます!」

「SASを使って,分析ができます!」

「fMRIを使って,研究したことがあります!」

「STで,臨床経験もあります!」

どのような経験・スキルが,その先生にヒットするかは,募集の内容と,学会などでのその先生の発言によって,なんとなくわかると思う。そして,面接などで,その部分をアピールして,「その他大勢」と差をつけることが必要となる。いずれにせよ,普段から自分を特徴づけるスキルをみがき,かつそれを学会などでアピールしていくことは,重要なことだ。

続いてはいよいよ,「アカポス」について,考えてみようと思う。

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