資源としての高齢者

高齢化問題

以前,「高齢化になって困る事」で,高齢化が進むと,どのような問題が生じるのか,特に社会保障費の観点から見てきた。
全人口に対して高齢者の割合が増えれば,医療費,年金,介護などで,保険料だけでなく,税金を多く使わなければなくなる。

しかし,高齢者の割合が増えるのは,数年間は確実なのだから,それに適応した社会づくりが必要になってくる。
いまさら,子どもを増やして,全人口の高齢者の割合を減らそうとしても,その効果が出るのは,20年は先の話になってしまい,この20年間は現状のまま,何とかしていかないといけないのは事実だ。

じゃあ,どんな方法が考えられるのか,ここでは考えてみたいと思う。

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年金制度について

年金だって,社会保険の一部である。
じゃあ,何のための保険かと言えば,年金は,働けなくなった高齢者が長生きしてしまった時のための保険だ

では,働ける期間を延ばせば,年金を払う必要はなくなってくる。
2018年現在,年金は65歳以上の人に支払われる。
そこで,65歳以上でも働いて,生活できるだけの額がもらえるならば,年金を支払わないようにする制度にすればいいのではないか。
その代り,例えば70歳までしっかり働いて,5年間年金を受け取らなければ,その後は年金を増額して受け取れる制度に切り替えていけばいい。
年金を受け取らない期間に比例して,月々にもらえる年金額が増える制度にするということだ。

実際,この制度はすでに存在していて,5年間,つまり70歳まで年金を受け取らなければ,月々にもらえる額は42%増えることになる。繰り下げ支給の仕組みだ。

ただ,現行の制度だと繰り下げられるのは70歳まで。
それ以上の繰り下げはない。
ならば,この繰り下げの仕組みに年齢制限を撤廃し,定年制も撤廃してしまえば,
死ぬまで働いて,年金を支給せずにすむ高齢者を増やすことも可能だ。
(国の視点からものを言っています。)

実際,自分がいつ死ぬのかなんてわからない。
であるならば,働けなくなってもらえる月々の年金額が多いに越したことはない。

そして老後と言えども時間は有意義に使った方が良いだろう。
実際,「働く」ということは,社会的な意義もあるし,自己効力感を高めることもできるだろう。

他人に援助してもらうだけの生活なんて,まっぴらごめんだと考える高齢者も少なくないと考える。

健康な高齢者を増やす

単純化するために,社会保障費の観点だけに絞って考えてみると,
医療費にしても介護保険料にしても,健康な高齢者が増えれば,そこに税金を投与しなくても済む。

では,高齢者に健康でいてもらうためには,どうしたらよいのか。

それは,「働いてもらう」ということだ。

少なくとも精神的な健康に働くことは良いとされている。
なぜ高齢でも働ける人の幸福度は高いのかという記事では,就業している高齢者が生き生きとしているというデータを示している。
高齢者にとって働くことは生きがいであることが示されている。

定年退職をして,日中活動を探すのは大変だろう。
ここで上手く活動を見つけることができなければ,無為な生活を送ることになってしまい,最悪認知症の発症にもつながりかねない。

また,健康のために働くという人も多い。
シルバー人材センターなどで働いている高齢者を対象にしたアンケートでは,なぜ働くのか質問したところ,金銭面よりも,日常の生活のリズムをつけたり,健康を維持することが目的という高齢者も少なくないようである。

つまり,働く⇒生活にリズムができる⇒健康になる
という,ごく単純な構図ができそうだ。
さらに,先に述べた年金制度も絡めると,働く高齢者を増やすことは,税金の支出の抑制にもつながると考えられる。

高齢者の定義の見直し

日本老年学会は,高齢者の定義を「65歳以上」ではなく,「75歳以上」にしようと提言した。
その理由は,「65歳以上でも心身の健康が保たれており,活発な社会活動が可能な人が大多数を占めている。」ということが挙げられている。

現代は,医学の技術も発展し,健康な状態の方が65歳以上であってもたくさんいる。
この健康な高齢者を使わない手はないのではないか。

たしかに,高齢化率は高くなってはいる。
そのなかで,健康な高齢者も増えている。
この健康な高齢者を資源として,労働力として,使わない手はないのではないか。
そして,彼らに仕事を与えることは,精神的・身体的健康という大きなメリットが,彼らにもある。

筆者の考えは,介護保険や医療保険の仕組みは変えず,年金制度のみ,繰り下げがいくつになってもできるように変更し,必要な方には必要な支給をする。
そして,高齢者が生き生きと働ける環境を整備することが急務と考えている。

高齢者が働くことの弊害

一方で,高齢者が働くことに対する反発もあるだろう。

世間では,「老害」という言葉があり,能力が低くなった高齢者が,管理職等にずっと居続けてしまうこと拒否する傾向はある。
また,高齢者の就労を支援することで,若手のポストを埋めてしまうのではないか,という懸念もあるだろう。
(ま,有効求人倍率なんかを見ると,現代はどこの業種も人手不足なんだけどね)

この辺も考慮して,高齢者が働きやすい環境づくりを研究,整備することも必要だろう。
高齢になれば,その能力・心理的な部分も変化してくる。当然,身体的な変化もある。
その辺りを考慮して,高齢者にどのような仕事を割り振るか,仕組みを作っていかなければいけない。

まとめ

高齢者が働くことは,働く高齢者自身にも,社会保障費の観点からも,大きなメリットがあると考える。
「誰かの役に立ちたい」というのは,高齢者になったとしても持ちうる考えだろう。
「社会に必要とされている」と感じられることは,高齢者にとってもとても良いことだ。

年金制度についても少し触れたが,「年金をもらわないことの魅力」がもっと高まれば,働く高齢者はさらに増えるのではないかと考える。
それが,実は社会保障費の抑制につながるのではないか。

実際,全人口に対して,高齢者の割合は増えている。
その高齢者をいかに資源として活用するのか,高齢者側から見ればいかに余生を有意義に過ごすのか。
この視点が,高齢化が進んだ現代に必要であると,筆者は考える。

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